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date = "2020-04-28"
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title = "銀河鉄道"
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slug = "04"
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type = "novel"
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今日もいつもどおり起床し、みんなゾロゾロと境界に向かった。
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しかし、今日に限っていえば、その必要はなかったことを思い出した。
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銀河鉄道は、境界よりも中央寄りの場所に停車するらしい。
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私は来た道を引き返した。
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見送りのためか、みんなもゾロゾロと境界ではなく停車位置に向かうのだった。
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私は、故郷の星の見えないガラス板の上で、こんな光景が繰り広げられていることに、少し吹き出しそうになる。
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停車位置にたどり着き、しばらく住人と別れの挨拶を交わしていると、かすかな音が聞こえたような気がした。
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みんな一斉にキョロキョロと当たりを見渡したが、鉄道らしき物体が宇宙を徘徊している様子はなかった。
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「おや、皆さん、時間はまだですよ」
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村長がそう言った。
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「あれ、おかしいな...何か聞こえたような気がしたんですけど」
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私は頭をかき、そうに言った。
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すると、住人の一人、カタツムリくんが上の方を指さして声を上げた。
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「おい、あれはなんだ!」
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「ん?何でしょう。私にもわかりません」
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村長が言った。
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仮に村長がわからないなら、多分、他の人にもわからないだろう。ここでは、そういう事が多かった。
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とすれば、あれは未知の現象ということになる。私は、心の中で、そんな事を考えていた。
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まさか、銀河鉄道が来る前に、変なトラブルだけはやめてくれよ。
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しかし、それが近づいて来るとはっきりわかるが、あれは人ではないだろうか。人の形をした何かがすごいスピードでこっちに近づいてくるみたいだった。
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「うわあああああ、な、なんだ!?」
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光熱と煙を巻き上げるほどのスピードだったらしい。しばらく経たないと正体が確認できないほどであった。
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その正体は、人だった。しかも、小さな女の子だ。
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小さな女の子が、宇宙の果てから飛んできた。宇宙服もなしにでだ。
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「あ、ああ...わけが...理論的に考えて...いや、どうやって...」
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村長がはじめてよくわからない言葉を発した瞬間だった。
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住人たちもはじめのうちはすごく動揺していた様子だが、次第にみんな落ち着きを取り戻すのだった。
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私も、これが銀河鉄道絡みの可能性を考え、一番最初にアクションすべきは自分だと判断した。
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まずは、女の子に話かけてみることからだ。
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「あー、はろー、君の名前はなんですか?」
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「アイだよ」
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「あー、アイ。変わった名前だね。君も下に見える星から来たのかい?」
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「アイは、向こうのほう、地球からだよ」
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「地球...知らないなあ」
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住人達は、ザワザワとそうつぶやく。
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どうやら目の前にいるのは本物の宇宙人らしい。私も実物で見るのははじめてだ。それに名前が奇妙なことにも頷ける。しかし、見た目は、私達人間と全く変わりないように見えた。
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「私は、北村正(きたむら・ただし)。足元に見える星の出身だよ。ここにいるみんなそうだ」
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「ふーん」
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「アイも銀河鉄道に乗るのかい?」
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「うん。地球から一番近いのがここなんだって」
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「あー、そうなんだ」
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この子もどうやら銀河鉄道に乗るらしい。
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すると、宇宙の果てからまた奇妙な音が聞こえた。
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「シュウウウ...」
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「今度はなんだ!」
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私は、気がつくとそう叫んでいた。
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「ああ、今度のは銀河鉄道でしょう。時間です」
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村長が言った。
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それは一瞬だった。大きな音がしたと思ったら、目の前に巨大な箱が流れていく。そして、それがやんだと思ったら、ドアが目の前でパッと開き、黄色い光があたりに溢れた。
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「おおっーーーーー!」「これが...」「僕は3回目だ」
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住人たちが口々に感想を述べた。
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私の印象でいうと、想像していたのと違ってモクモクの煙はでていないようだった。
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光と少しの音がするだけの影の列車という印象だ。
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アイが自分の後ろについていた。
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正直、よくわからない宇宙人の訪問で自分の中にあった銀河鉄道への恐怖が吹き飛んでいた。むしろ、清々しく明るい気分だ。
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「みんな、今までありがとう。できることなら、また帰ってくるよ!」
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「おう、がんばれよ!」「達者でな」「北村くん、さようなら。またいつでも帰っておいで!」
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そんなお別れの言葉もあっという間、列車は二人を乗せ宇宙の彼方へと走り去っていくのだった。
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