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web/content/novel/03.md

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2024-04-05 08:44:02 +00:00
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date = "2020-04-27"
title = "前日"
slug = "03"
type = "novel"
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あれから数日が過ぎた。いや、もしかしたら数年だったかもしれない。ここでは時間の感覚が大きく狂うので仕方ない。
そんなある日、村長が言った。
「明日あたり、銀河鉄道が来ると思います。乗りたい人は準備しておくといいですよ」
村長というのは、私に最初に声をかけてくれた人で、みんなから村長と呼ばれていた。時間を可能な限り正確に把握しているのも、この中では彼だけだ。
「えっ、明日!?」
私は、いつもの日課をこなそうという最中だったが、驚いて声をあげた。
「ああ、そうですよ。おそらく、明日」
「それで、村長は、どうするんです?」
「ああ、私は、今回もパスになりますよ」
「...そう、ですか」
村長の気持ちも少しわかる。もし列車に乗って変なところに連れて行かれるくらいなら、ここでのんびり暮らすのも悪くない、そう思うからだ。
すると、村長が私に言った。
「北村くんは、おそらく、乗っていかれるんでしょう。寂しくなりますよ」
「はい、私は、乗る予定です」
今回乗るのは、この中では自分だけだった。
このあとも何人出るのか、わからない。もしかしたら、自分で最後かもしれない。そんなことを思った。
正直、私だって怖い。怖くて怖くてたまらない。だが、ここに来て最初に言った言葉を私はまだ覚えていた。
「私、乗ります」
ここに来て銀河鉄道の話を聞いたとき、私は、そう言った。
最初に直感したことは正しいことが多い。そんな人生の経験則に従い、私は、乗ることに決めたのだ。
ただ、後々になってみると、乗るのは自分だけではなかった。
しかもそれは、ここの住人でもなければ、知っている人物でもなかった。
それは、見ず知らずの女の子だった。
まさかあんなことが起ころうとは、誰も予想していなかった。宇宙の果てから少女が飛んできて、自分の後ろに並ぶなんてことを、一体、誰が予想できただろう。
ここの住人の誰もが、あの村長でさえ、とんでもなく予想外の出来事だったはずだ。